FARGOシーズン1 第1話「人喰いワニのジレンマ」レビュー(ネタバレ)シリアスで残酷だが時々ギャグが気になるドラマ

FARGOシーズン1

出典:© 2014 MGM Television Entertainment Inc. and Bluebush Productions, LLC. All Rights Reserved.

FARGOシーズン1は傑作と言える出来栄えの海外ドラマだろう。全体的に静かでやや地味な作りになっているが、時々「ま、マジか!」という驚きの展開が待っている。
意外にもその描写がかなり残酷で生々しいのも驚きだ。
派手さはないがシリアスで大人向けの海外ドラマが好きな人は満足できる作品になっていると思う。

相性最悪夫婦の破滅への会話

ドラマの冒頭でのレスター・ナイガードとその妻パールの自宅での会話。
絵に描いたように相性が悪い夫婦の会話で、ここまで相性が悪くて仲が悪い状態でよく離婚せずにいるものだと不思議になる。
毎エピソードの最初に字幕が表示されるのだが、このドラマは実話で、登場人物の名前を変えた以外は忠実に描かれたものらしい。
しかしどこまで忠実なのかというところは正直疑問。この記事にも書いている登場人物の愚かな感じの性格などはかなり脚色が加えられているものなのではないかと思う。あくまで全体的なストーリーの流れは実際の事件を忠実に描いているというものなのではないだろうか。
レスターはうだつのあがらない保険のセールスマンだが、妻にいつもガミガミと文句ばかり言われている。
パールは他人の話を聞いてうらやんでばかり。自分が持っていないものがあるのはすべて夫のせいだと言わんばかりに文句ばっかり言っている。
何をどう間違ってこの二人が結婚したのかは分からないが、相性の最悪な人間同士の結婚というものはまさに人生の破綻だと感じさせる。
つまりレスターもパールも、もっと相性の良い相手と結婚していたなら、それぞれがもっと良い人間として生きていけたのかもしれない。

完全にギャグとしか思えないジャイアン登場

ある日レスターは道端で昔の同級生サム・ヘスとばったり出くわすが、これがまたギャグとしか思えないようなキャラクター。完全に漫画のジャイアンをそのまま実写化したかのようなキャラクターで、子供の頃レスターをいじめていたらしいが、おっさんになった今も無意味にレスターをいじめようとする。ひさびさに会って突然いじめだすという、この男の中の恥という概念は一般的な社会人とは全く別物のようだ。この人物設定もこの海外ドラマの脚色を感じる部分。

パンチ

さらにもうひとつギャグとしか思えないのが、このサム・ヘスの息子二人が父親よりさらに馬鹿だということ。
父親がおっさんをいじめているのを見て喜び、一緒になって盛り上がっているのだ。
この息子二人はこの海外ドラマで今後もしばしば登場するが、こいつらの馬鹿さは今後も全く留まるところを知らない。

自分を持たないレスターが出会った凶悪な意思

レスター・ナイガードはサム・ヘスに道端でいじめられて自分で鼻を怪我して病院に行くのだが、ここで彼に運命の出会いが待っている。
待合室のソファーに座っている時に、殺し屋ローン・マルヴォが隣にいるのだ。
言葉を交わしているうちに、レスターが怪我をした経緯を話すことになり、なぜかローン・マルヴォがサム・ヘスを殺すんだか殺さないんだかという話の流れになる。

病院の待合室のイメージ

ここがこの海外ドラマの最初にして最大の疑問。
一体なぜ、ローン・マルヴォがサム・ヘスを殺す気になったのだろうか。
彼は別にレスターから正式に頼まれたり泣きつかれたりしたわけではなく、もちろん金で雇われたわけでもない。自分からレスターに怪我の経緯などを質問して、その加害者がサム・ヘスでそいつはひどい男だと聞かされただけ。
ここでローン・マルヴォがなぜサム・ヘスを殺す気になったのかはこの海外ドラマを最後まで見ても明らかにはなっていない。(私が居眠りして見落としているのでなければ)

ところで、この時の病院の看護師がやたらイラつく人物だ。
忙しいのは仕方ないが、怪我をしているレスターをやたら長時間待たせた挙句、レスターがローン・マルヴォと話している時に呼びに来て、話しの途中だからとレスターがなかなか立ち上がらないのを見て口うるさくレスターを呼ぶ。
長時間待たせておいて自分は一切待たないという態度。そしてそのイラつく呼び方はかなりの演技力。
名もなき登場人物だがここまで迫真のイラつかせ方をするあたりは才能のある役者だと言えるだろう。笑

ローン・マルヴォの世界に法律は存在しない

ローン・マルヴォは別にレスターに依頼されたわけでもないのに、わざわざ自分からサム・ヘスという男がどいつなのか下見に行ったりする手間もかけつつ、きっちりその男を殺す。
もしかするとローン・マルヴォは、本当にイラつく男なのかどうかを確認するために下見に行ったのかもしれない。そしてレスターの言う通りの男だということが確認できたからその仕事を遂行したのかも。

ナイフ

ローン・マルヴォは訪れたモーテルの受付のおばさんがイラつく女だった時にも、そこの従業員をけしかけてトラブルを引き起こさせる。
彼は腹が立ったらとりあえずなんらかの行動をおこすのかもしれない。
つまりレスターがいじめられているのを見て、ローン・マルヴォは普通にいじめっ子に対してイライラしたからそれを行動に移しただけという可能性も考えられる。

マルヴォがレスターに「世の中のルールにとらわれるな。ルールなどない」と言うシーンがあるが、マルヴォは本当に法律などのルールとは関係なく、自分の感情だけに従って生きている男なのかもしれない。

残酷なのにギャグ要素を入れる洒落た演出?

第1話では終盤に驚くべき展開が待っている。
シリアスで残酷な展開なのだが、またまたここでギャグ要素が・・・
まず、レスターが洗濯機を壊す時のその洗濯機の壊れ方と言ったら、完全にギャグ漫画の描写の仕方にしか見えない。
ドカドカいいだしてモクモクなりだしてドッカーン!みたいな・・・

洗濯機

さらに、レスターの妻パールが死ぬのだが、死ぬ時の顔がなんか寄り目・・・
最初の一撃を食らった時も寄り目で突っ立ってるし、ぶっ倒れたあとメチャクチャ殴られて血まみれで死んでる顔もまだ寄り目のまま。
かなり突然の残酷シーンで驚くべきところなのだが、この寄り目のせいで、これはコメディなのかそれともシリアスなのかよく分からない気分になった。
最初にも書いたが、こういう演出や登場人物の性格はかなり脚色されているものだと思うので、この海外ドラマがそんなに細部まで忠実に描かれた作品だとは思えない。あくまで全体的なストーリーを忠実に描いたものだと思う。

しかし、この残虐なシーンがなければ、このドラマの全体的な静けさのせいで今後次のエピソードを見るかどうか迷っていたかもしれない。
今後も時々発生する意外なほど残虐なシーンはこの海外ドラマにおける唯一の派手な要素で、これがこの海外ドラマの非常に秀逸な要素になっているとも言えるだろう。

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